34歳からの数学博士

数学徒・プログラマ・一児の父

「第3回 プログラマのための数学勉強会」開催しました!(動画&資料つき)

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どうも、佐野です。5/22(金)「第3回 プログラマのための数学勉強会」が開催されました。今回も各セッションの動画・資料と共に、簡単に内容のご紹介をさせて頂きます。

1. 「プログラマのための線形代数再入門 3」 - taketo1024

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線形代数再入門シリーズのラストとして、「基底変換と固有値・固有ベクトル」について発表しました。基底変換(座標変換)は応用においても頻繁に使われる手段ですが、2つの座標系を同時に考えるというのはなかなか難しいものです。今回は変換を簡単に表現するという動機で、基底変換と固有値・固有ベクトルの仕組みが掴めるような構成にしてみました。

最後には一般のベクトル空間の話にも触れ、フィボナッチ数列の一般項を求めるのを固有値・固有ベクトル問題として見る方法を紹介しました。僕が大学で線形代数を学んで一番感動したのは「今まで習ったものほとんどベクトルだったんじゃないか!」というところだったので、その話をせずには終われませんでした。

[資料]

※ たまたま近い時期に「固有値・固有ベクトルを可視化するプログラム」を公開されていた方がいたので、こちらで紹介させて頂きます!

2. 「五次方程式が代数的に解けないわけ」 - tsujimotter

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日曜数学者 id:tsujimotter さんの「ガロア理論」の発表です。高校の教科書にコラムとして載っていた「三次方程式、四次方程式の解の公式」の下に「五次方程式は解けない」とサラッと書いてあったのがガロア理論との出会いだったとのことです。

「五次方程式が解けないことを証明する理論」というと後ろ向きな感じがしてしまいますが、「方程式が解けるとはどういうことか」を突き詰めて、無限にある可能性の中からコアとなる構造を取り出すことでその性質を明らかにしていく壮大な謎解きの理論だと思えば、ガロア理論のワクワク感が感じられるかと思います。

終盤「群」に慣れていない方は難しく感じたかもしれません。基本領域ゼータ関数 など難しいものを次々と目に見えるものに変えてしまう辻さんなら、「大きな群でも見えるようになってしまう何か」をきっと作ってくれることでしょう…!(個人的希望)

[資料]

3. 「つながり方・まがり方・大きさ」 - matsumoring

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学生時代に位相幾何学を専攻されていた matsumoring さんによる幾何学の発表です。小学校や中学校で習った図形には、実は不思議な性質が隠れています。正多面体の頂点・辺・面の数を数えていくと、そこに共通の法則がある。三角形の内角の和が 180° というのも、平面にない三角形については実は成り立たない。

身近な図形の性質を一つ一つ調べながら、その関係性に成り立たせている法則を明らかにし、最終的には「つながり方・まがり方・大きさ」が一般の立体においても一つの式で関係しているという「ガウス・ボンネの定理」まで到達するという驚きのプレゼンでした。

[資料]

4. 「線形計画法と整数計画法」 - kaneshin

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株式会社エウレカの開発者 kaneshin さんの発表です。与えられた条件の中で目的の関数を最大・最小化する「最適化問題」の中で、特に条件・目的関数が線形である「線形計画問題」とさらにそれらが整数値を取る「整数計画問題」に関する解説でした。

連続値であれば条件を満たす領域における目的関数の等高線のギリギリのところを求めれば良いものが、整数値の場合は必ずしもそのようなやり方ではうまくいかない。「整数値は高々有限」などと高をくくっていると、膨大な量の候補の前には計算が追いつかなくなる。

このような計画法は実用上有用だし、解法は企業や国家が独占してオープンにされていないことが多いのでまだまだ研究の余地が残されているということです。

[資料]

5. 「物理における微分方程式と数値計算」 - 久徳浩太郎

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理化学研究所で重力波・宇宙物理の研究をしている久徳さんによる微分方程式の発表です。ユニークな語り口調で、微分方程式とは何か、どうやって解くか、どういう場合に解けないか、解けない場合はどうするか、といったことを順に解説してくれました。

随所で研究者ならではキレがあって聞いていて楽しかったです。例えばスーパーコンピュータ「京」に突っ込むプログラムの正当性を検証するために、ブラックホールの周りでガウス・ボンネの定理が成り立っているかどうかをテストしたりするんだとか。テストの重要性を説くエンジニアはたくさんいますが、こんなテストコードを書いたことのある人は滅多にいないと思います。

[資料]

所感&反省

今回はだいぶ数学色の強い会になったと思います。数学好きな人は楽しめる内容だったとは思いますが、せっかくプログラマの方々に集まって頂いているので、何か簡単なデモアプリを作るとか、そういう見せ場もあった方が良かったかなと思いました。

あと個人的には資料の作り方をもっと工夫したい!黒板にスラスラと書いていくようなライブ感をスライドで表現できたら楽しいだろうなと思います。なんか良い感じの iPad アプリないかな。自分で作ろうかな。

それでは、また次回をお楽しみに!

※ 今回は馬場彩さんに写真を撮影していただきました。ありがとうございます!


https://codeiq.jp/magazine/2015/07/25421/